【巨人】「鬼」を封印した阿部慎之助の真意 オープン戦首位で見せた〝仏のマネジメント〟は本物か
かつて、これほどまでに穏やかな巨人の春があっただろうか。
阿部慎之助監督(47)率いる新生・巨人が、オープン戦を10勝5敗1分けの首位タイで終えた。しかし、周囲が色めき立つ好成績以上に驚きを与えたのは、現役時代の「鬼軍曹」のイメージを覆す指揮官の振る舞いだった。
「積極的なミス」を許容する変化
象徴的だったのは、11日のソフトバンク戦。11四死球と大乱調の投手陣に対し、かつての阿部監督なら厳しい叱責が飛ぶ場面だ。だが、口を突いて出たのは「いいところを探すのが難しいね」という苦笑い。野手の走塁ミスに対しても「いい収穫」「積極的だった」と、むしろ失敗の質を肯定する場面が目立った。
この変貌を、ある中堅選手はこう分析する。
「メディアが作る『怖い監督』というイメージは現場にはありません。監督が求めているのは感情的な反省ではなく『なぜ起きたか』の整理。軸が明確なので、僕らも迷いなくプレーできるんです」
「小細工」の野球に必要な心理的安全保障
なぜ、阿部監督は「仏」を演じているのか。その背景には、今の巨人が抱える過渡期の苦悩がある。
主砲・岡本和真が米球界へ去り、期待の若手・リチャードも故障離脱。長打力不足が懸念される中、今季のチームが掲げるのは、足と小技を絡めた「泥臭く1点をもぎ取る野球」だ。
緻密なサインプレーや果敢な走塁を完遂させるには、選手がミスを恐れて萎縮することが最大の毒となる。失敗を即座に「収穫」と言い換えるマネジメントは、選手たちの足を止めさせないための、計算された「心理的安全保障」と言えるだろう。
「勝負の秋」まで空気は保たれるか
もちろん、勝負の世界は甘くない。オープン戦での「内容重視」は、勝敗が直結するペナントレースが始まれば通用しなくなる。連敗が込み、1点の重みが牙を剥くとき、指揮官の表情に再び「鬼」が宿るのか。あるいは、この穏やかな空気を最後まで貫き通すのか。
19歳の石塚裕惺や、支配下を勝ち取ろうとする宇都宮葵星ら、新しい力がこの「仏のタクト」の下でどれだけ伸び伸びと躍動できるか。15年ぶりの日本一奪還を目指す阿部巨人の成否は、この「空気感の持続力」にかかっている。