阪神・村上頌樹が示したエースの矜持。不調を自覚しながらも崩れぬ「粘投」が呼び込んだ逆転劇
阪神が10日、バンテリンドームで行われた中日戦で5ー3の劇的な逆転勝利を飾り、首位の座を奪還した。2点を追う9回無死から佐藤輝明と大山悠輔の連打で反撃を開始。二死一、三塁から代打・前川右京の適時二塁打に相手のミスも重なり、一気に試合をひっくり返した。この鮮やかな逆転劇の伏線となったのが、先発した村上頌樹による7回2失点の力投だ。
数字を見れば113球を投げて6安打2失点。本来のキレを欠き、5回以外は毎回走者を背負う苦しいマウンドだった。2回には味方の失策と四球から一死満塁を招き先制を許すと、3回にも細川成也に適時二塁打を浴びる展開。しかし、ここから崩れないのが村上の強さだ。最少失点で食い止め、終盤に反撃の余地を残したことが、最後のドラマへと繋がった。
試合後、村上は決勝打を放った前川に対し「右京が打ってくれて助かった、感謝したい」と殊勝に語る一方で、「すぐにマウンドにアジャストできるよう練習したい」と自身の課題を見つめた。実は登板前、村上は自身のコンディションを「良くない」と率直に認めていた。わずかな制球のズレを冷静に分析した上で、狭くなったバンテリンドームでも一発を恐れず「攻めて打たれたなら仕方ない。割り切るしかない」と腹をくくっていたという。
2023年にMVPと新人王をダブル受賞し、昨季は投手3冠に輝くなど、栄光と苦しみの両方を知る右腕。万全ではない時期にどう試合を作るかという術を、彼はすでに身につけている。藤川球児監督も「先制はされたが、7回まで尻上がりに上げてくれた積み重ねが、いい方に転んだ」と、その粘りを称賛した。
華々しい完封劇も魅力だが、調子が悪いなりに試合を壊さず、チームを勝利へ導く。泥臭くマウンドを守り抜いた村上の姿に、首位を走るチームの底力が凝縮されていた。