那須川天心が崖っぷちから執念の生還!エストラダを撃破し井上拓真への再戦切符を掴む
神童が絶望の淵から這い上がってきた。11日に両国国技館で行われたWBC世界バンタム級挑戦者決定戦。同級2位の那須川天心は、2階級制覇の実績を持つ難敵フアンフランシスコ・エストラダを9ラウンド終了TKOで退け、見事に再起を飾った。
昨年11月、現王者の井上拓真に敗北を喫し、プロキャリアで初めて大きな壁にぶつかった那須川。自ら今回の試合を崖っぷちと称して背水の陣で挑んだが、勝利が決まった瞬間、その目には光るものがあった。リング上では泣いてないですよと照れ笑いを浮かべつつも、勝つことの喜びを改めて噛みしめる姿が印象的だった。
試合内容は、これまでの課題を克服した成長の跡が見えるものだった。かつての師である葛西裕一氏との師弟関係を復活させ、磨き上げてきた左ボディが炸裂。序盤から鋭いジャブで主導権を握ると、1ラウンド、4ラウンド、そして7ラウンドと強烈な左でエストラダを追い詰めていく。最終的に相手が脇腹の痛みを訴えて棄権する形となったが、それは那須川が徹底して急所を打ち抜いた結果だった。
試合後の会見では、前戦のトラウマに触れる場面もあった。4ラウンド終了時の採点でドローの評価を聞いた際、嫌な記憶がフラッシュバックしかけたという。しかし、その苦い経験こそが今の強さの源となった。一度はボロボロになったメンタルを立て直し、苦手としていた接近戦でも一歩も引かない姿勢を見せたことは、ボクサーとしての大きな進化を証明したと言えるだろう。
視線の先には、5月2日に行われる井上拓真と井岡一翔の一戦がある。那須川が切望するのは、もちろん井上へのリベンジだ。拓真選手が勝つことを願って、毎日てるてる坊主を作って祈りたいとユーモアを交えて語ったが、その言葉には並々ならぬ覚悟が滲む。敗北という崖から這い上がった男が、再び世界の頂を目指して過酷な登攀を開始した。