「今からでも遅くない」“オルカンの仕掛け人”代田秀雄氏が語る、新NISA時代の長期投資の始め方
新NISAのスタートをきっかけに、資産形成を始める人が一気に増えている。なかでも、個人投資家の間で圧倒的な支持を集めているのが、通称「オルカン」こと「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」だ。
その“生みの親”として知られる三菱UFJアセットマネジメント特別業務顧問の代田秀雄氏が、「今から始めても遅くないのか」という、多くの初心者が抱える率直な疑問に答えた。
「もちろん、今からでも十分に間に合います。5000円でも1万円でも、無理のない額から始めればいいんです。大切なのは、始めることと続けること。20年単位で見れば、投資は景色が変わります」
“出遅れたかも”と感じる人ほど、まずは少額で
新NISAが始まって以降、オルカンは“王道商品”として存在感を強めている。世界中の株式に幅広く分散投資できるうえ、信託報酬が低く、長期保有との相性がいいことから、積立投資の中心として選ぶ人が増えている。
一方で、ここまで注目が集まると、「今さら始めても高値づかみでは」「もう乗り遅れたのでは」と不安になる人も少なくない。
代田氏は、そうした“出遅れ感”そのものが、投資を遠ざける最大の要因だとみる。
「投資って、タイミングを完璧に当てようとすると、いつまでも始められないんです。むしろ、早く『習慣』にしてしまうことの方が大事。毎月積み立てることに慣れるだけでも、大きな一歩ですよ」
相場が荒れる時こそ試される“握力”
足元では、中東情勢の緊張やエネルギー価格の変動など、マーケットを取り巻く不透明感が強まっている。こうした局面で、積立投資を続けている人のなかには「このまま持ち続けて大丈夫なのか」と不安を感じる人もいるだろう。
しかし、代田氏は、長期投資において本当に重要なのは“今の値動き”ではなく、“どれだけ長い時間軸で持てるか”だと強調する。
「投資で難しいのは、何を買うかよりも、どれくらいの期間で考えるかです。私はずっと、20年くらいの時間軸で見てほしいと言っています。短期では当然、下がることもあります。でも、世界経済全体で見れば、長い目では成長してきた歴史がある」
過去には、リーマン・ショックのような大幅下落局面もあった。それでも、世界株式はその後回復し、時間をかけて持ち直してきた。だからこそ、日々のニュースに振り回されすぎない“握力”が、積立投資では欠かせないというわけだ。
個別株よりも、初心者には「全体を持つ」発想
不安定な地政学リスクや景気の先行きが読みにくい今の環境では、個別銘柄を選ぶ難しさも増している。
代田氏は、こうした時代だからこそ、特定の企業や国に賭けるのではなく、「世界経済そのものを持つ」発想が有効だと話す。
「明日どこで何が起きるかは、誰にもわかりません。ひとつの出来事で、個別株は大きく動いてしまう。でも、投資信託で世界全体に分散していれば、1社や1地域の影響を和らげられる。長く続けるなら、精神的な負担が少ない方がいいんです」
その意味でも、オルカンは“増やすための道具”であると同時に、“余計なストレスを減らすための仕組み”でもあるという。
投資はゴールではなく、「人生をよく回す」ための手段
代田氏が繰り返し語るのは、「お金は増やすこと自体が目的ではない」という考え方だ。
仮に資産が大きく増えたとしても、使わなければ意味がない。お金を使うことで、自分の生活が豊かになり、企業の売上にもつながり、結果として経済全体が回っていく。投資は、その循環を支える一つの手段にすぎないという。
「お金は、使ってこそ価値があると思うんです。貯め込むだけでは、本人にも社会にもリターンが少ない。少し運用して、将来もっと気持ちよく使えるようにしていく。そういう考え方の方が、健全じゃないでしょうか」
新NISAの浸透で、「投資しなきゃ」と焦る空気も広がる一方、生活費まで削って無理に投資へ回す“投資優先”の姿勢には注意も必要だ。
「生活を犠牲にしてまでやるものではないです。今を楽しみながら、余裕資金で少しずつ続ける。それが、いちばん長続きします」
40代から始めたからこそ伝えられること
いまや“オルカンの仕掛け人”として知られる代田氏だが、実は自身が本格的に資産形成に向き合ったのは40代に入ってからだという。
そのため、「自分もスタートが早かったわけではない」と笑う。
だからこそ、いま投資を始めようか迷っている人に対しては、「遅いかどうか」ではなく、「これから何年続けられるか」を考えてほしいと語る。
新NISAによって投資のハードルは確かに下がった。だが、本当に重要なのは制度の活用テクニックではなく、無理のない金額で、長く、静かに続けることなのかもしれない。
“今からでも遅いのでは”と迷っている人に対し、代田氏の答えは明快だ。
「遅くありません。始めるなら、今日がいちばん早い日です」