巨人・山瀬慎之助がベンチで阿部監督の隣を死守する深い理由
4月9日にマツダスタジアムで開催予定だった広島戦は、あいにくの雨天中止となった。この日「8番・捕手」で先発に名を連ねていた山瀬慎之助にとっては、アピールの機会が持ち越しとなった形だが、最近ファンの間では試合の内容以外でもある光景が話題となっている。それは、中継映像に映り込むベンチ内の様子だ。
阿部慎之助監督のすぐ隣に陣取り、真剣な表情で助言に耳を傾ける山瀬の姿は、いまやチームの日常風景となりつつある。時には厳しい表情で配球について議論し、時には笑顔を交えて談笑する。指揮官が特定の選手をこれほどまでに傍らに置くのは珍しいことだが、この「指定席」には山瀬のプロ生活の原点が隠されていた。
遡ること2020年。山瀬が巨人に入団したこの年、阿部監督もまた二軍監督として指導者のキャリアをスタートさせている。同じ「慎之助」の名を持つ期待の新人捕手に対し、阿部監督は徹底した英才教育を施した。春季キャンプでは現在も語り草となっている過酷な「股割り連続ティー」で追い込み、技術面でもマンツーマンで指導。阿部監督が二軍を指揮した2年間、山瀬は105試合に出場したが、その当時からベンチの隣席は山瀬の定位置だったという。
なぜ、常に隣にいたのか。山瀬本人は「よく怒られていたからですよ」と苦笑いしながら振り返る。試合の真っ最中であっても、配球ミスがあれば即座に「今のリードは何だ」と雷が落ちる。そうした緊迫感のあるやり取りを繰り返す中で、自然と監督の隣に座るスタイルが定着していった。
山瀬は「自分のプロ野球の軸は、1、2年目に阿部さんから教わったことにある」と断言する。一軍の舞台となった現在も、その関係性に変わりはない。試合の高度な駆け引きから、ちょっとした冗談まで、阿部監督の言葉を一番近くで吸収し続けている。
出場機会こそ限られているものの、球界を代表する名捕手だった指揮官の感性をダイレクトに学べる環境は、若手捕手にとって何物にも代えがたい財産だ。勝利を目指す戦いの最前線で、阿部監督は自らの後継者となるべき「リトル慎之助」の成長を、その隣でじっと見守っている。